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狂歌で江戸を笑わせ、勘定で国を支えた大田南畝

蔦重をめぐる人物とキーワード⑳


5月25日(日)放送の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第20回「寝惚(ぼ)けて候」では、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/通称・蔦重/横浜流星)の耕書堂の書籍が、ついに江戸市中に流通する様子が描かれた。一方、江戸城では、将軍職後継をめぐる陰謀が渦巻いていた。


蔦重が江戸市中の大手本屋の牙城を崩す

鳥文斎栄之によって描かれた大田南畝(Colbase/東京国立博物館蔵)。最期は、登城した際に転倒してできた傷がもとで死去したが、下級武士から有能な幕府官僚に上り詰める一方、狂歌師や文人などで多才を発揮したその生涯は、江戸文化に多大な影響を与え、大きな足跡を残したといえる。

 田沼意次(たぬまおきつぐ/渡辺謙)は、次期将軍に一橋治済(ひとつばしはるさだ/生田斗真)の長男・豊千代(とよちよ)を、その正室に田安家の種姫を迎える案を治済に伝えた。豊千代には薩摩藩主・島津重豪(しまづしげひで/田中幸太朗)の娘である茂姫との縁談があったが、意次は茂姫を側室とすることを提案。しかし島津家は反発する。実は重豪は治済の指示で反対しており、治済は種姫を排除し田安家を退ける魂胆だった。

 

 この動きに田安家初代正室・宝蓮院(ほうれんいん/花總まり)らは、意次が裏で糸を引いていると疑い憤慨した。大奥総取締・高岳(たかおか/冨永愛)は、意次の策略を非難する松平定信(まつだいらさだのぶ/寺田心)の書状を意次に見せる。その後、種姫は紀州徳川家へ嫁ぎ、豊千代は正式に将軍・徳川家治(いえはる/眞島秀和)の養子となった。世継ぎ問題は一橋家の思惑通りに進んだが、意次は政治体制の安定を家治に誓った。

 

 一方、蔦重は、耕書堂の出した青本「見徳一炊夢」を激賞した大田南畝(おおたなんぽ/桐谷健太)と会い、執筆を依頼する。さらに市中の地本問屋の岩戸屋(中井和哉)から「見徳一炊夢」を扱いたいとの申し出を受けた。

 

 これを機に、蔦重は喜多川歌麿(きたがわうたまろ/染谷将太)に鳥居清長の画風を模倣させ、西村屋(西村まさ彦)の錦絵に対抗して「雛形若葉初模様」を企画。西村屋より安価な入銀で人気を集め、西村屋の錦絵「雛形若菜初模様」を刊行中止に追い込んだ。

 

 西村屋が錦絵に続き、安定した売上があった『吉原細見』の刊行も見合わせる事態となると、岩戸屋ら中小の地本問屋は蔦重との取引を禁じてきた大手に対し不満を爆発させ、蔦重との取引を訴えた。鶴屋(風間俊介)はこの要求を受け入れ、蔦重は江戸市中の本屋との取引をようやく開始。売上を大きく伸ばしたのだった。

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小野 雅彦おの まさひこ

秋田県出身。戦国時代や幕末など、日本史にまつわる記事を中心に雑誌やムックなどで執筆。近著に『「最弱」徳川家臣団の天下取り』(エムディエヌコーポレーション/矢部健太郎監修/2023)、執筆協力『歴史人物名鑑 徳川家康と最強の家臣団』(東京ニュース通信社/2022)などがある。

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